2012/01/18

before and after

お雑煮に使った大根より育つ葉
日本の大根よりばさばさしてた

12月にドイツに戻ってくるとき、お正月の定番お餅を含め、日本の食材をいくつかもってきました。お餅、納豆、とろろ、あんこ。これらは私がこれまで会った多くの欧米人が苦手とする食べもので、mr.モッツァレッラはどうだろうと思いつつお餅をお雑煮にしてみたら、御多分にもれずダメでした。人が何かを食べる前と後で顔色が変わっているのを久しぶりに見ました。

ふと思い出したのがカナダのユーコン準州でゴーファー(プレーリードッグ)を食べたときのことです。大学で専攻していた文化人類学の授業の一環として、カナダの先住民族を訪ねる旅がありました。そのときに訪れた民族のひとつが、ユーコン準州で暮らすトショーニ民族。ウェルカムパーティーで彼らがふるまってくれたのが、ゴーファーの丸焼きでした。

バットの上に並べられたゴーファーの亡がらたち。私の記憶の中では、お尻から串刺しにされ、目を閉じ、うなだれ、しかし手はかわいらしく胸の前でグーにしてます。それらを一匹ずつ火あぶりにし、焼け焦げた毛をナイフでこそげ落としていきますが、ちょっと深くそぎすぎると内臓が飛び出してくることも。雄大なユーコンの景色の中で嗅いだ、あの毛が焼ける臭いは忘れることができません。その後どのようなプロセスを経たのかは不明ですが(人生には知らなくていいことがある、ということもこの旅で学びました)、夕方パーティー会場へ着き、ドアを開けるやいなや鼻に飛び込んできたのはあの臭い。そして視界に飛び込んできたのはあの姿でした。

できればなかったことにしたい・・・。しかし、私たちには断るすべはありませんでした。なぜなら、ゴーファーはトショーニ民族の大切なおもてなし料理だったからです。目の前にいる友人たちの、食べる前と食べた後ではすっかり変わり果てた顔色が忘れられません。きっと私の顔色もカメレオンのように変化していったはず。

この話をmr.モッツァレッラにして、「あのすごい臭いと味のゴーファーと、ほとんど味のないお餅を比べるのもね・・・」と言うと、まさにその味がないのが問題だとのこと。たしかにドイツ人は味の濃い食べものが好きなので、繊細なだしの味を楽しむお雑煮自体苦手かもしれません。ましてや初めて体験するあの食感。

私のお餅を使ったお気に入りレシピはこれ。フライパンでチーズをのせて焼き、最後にお醤油をじゅっとかける食べ方。たまたま家にあったのがゴートチーズ(ヤギのミルクでできたチーズ)で、なんとも不思議な組み合わせなかんじがしましたが、味には満足。ちなみに日本でゴートチーズというと特別で値段が高いイメージがありますが、ドイツでは他に無数にあるチーズと同じ地位にいます。

あれだけしっかり味がついていればmr.モッツァレッラも大丈夫かもしれないけど、もうお餅というだけでお箸をつけることはないでしょう。でも、いつか私たちが日本でお正月を迎えることがあったら、そのときは食べなくてはいけませんよ。私たちの大切なお正月のおもてなし料理ですからね。


あえてチーズは完全にとろけさせず